前作「
虚像の道化師 ガリレオ 7」に引き続いて、まさかの2ヶ月後の刊行!
編集担当者の記載では、どうしても「猛射つ」を入れて5作に成ると、分厚く成り過ぎて、、、著者自ら「2冊にしましょう、後、3作書きますから!」
と、まさかの書き下ろし、、、
今回の書き下ろし短編集、ファン必読です。
本当にガリレオがガリレオらしい、秀美の一冊!
禁断の魔術 ガリレオ8 東野圭吾
今回も4編の短編集ですが、4章目の「猛射つ」が中編で、1冊の約半分弱を占めます。
この話が、久々にしっとりとガリレオらしさを味合わせて呉れました。
良い話を読み終わった後の満足感、爽快感は良い音楽を聴いた後と同じで、凄く心地の良い物です。
その心地良さと余韻を味わう事が出来ました。
他の3編も悪くは無いのですが、すっと読めて、軽めの心地良さ。
上手いなぁ、筆力有るなぁ、、、ああ、面白かった。と、云う、手練れの指揮者が子飼いのオケを振って、非常に纏まった見事な演奏会だった時の様な感想。
湯川准教授の科学的推論で事件が解決する様な単純な話では無く、もっと人間的な関わりで、科学的推論が狂言回しとして作用する、最近のこのシリーズのパターンであり、パターンで在っても楽しめる話の運びでした。
前作の「虚像の道化師 ガリレオ 7」と似た様な運びで、「まぁ、何時ものシリーズだなぁ。楽しいなぁ。(ほんの少し物足りない感が、、、、)」
此処で裏切られました。
帯より
「湯川が殺人を?
『自業自得だ。教え子に正しい科学を教えてやれなかったことに対する罰だ』」
この文は、4章目の「猛射つ」に対する文です。
入り組んだ人間関係、その個々の想い。どれだけの苦悩があったのか、、、見事に行間から浮かび上がらせつつ、話そのもののテンポの軽さは失われていない。
そして、湯川准教授自身の信念。それが世間的に異常であっても。科学者としての信念からは正しい態度。その潔さ。
全てが絡みながら、見事に結末を迎えます。
長編にせず、中編に纏め上げた著者の見識に、改めて敬服しました。
稀代の名演に、予期せず巡り会った幸福感が感じられた、それ程の出来でした、クマにとって。
いや、この中編を読むだけの目的でも、本書を購う価値は御座います。
是非、読んでみて下さい。
面白いです。