前作の「1Q84」からもう3年も経ったのですねぇ、、、
4月12日に出たばかりの村上春樹氏の新作ですが、文藝春秋社、前代未聞の単行本初版30万部!で、足りず、、、発売初日までに4刷50万部とか、、、人気アイドルのCDでも今時ここまで売れませんぜ、、、ノーベル文学賞は逃しても快進撃!
でも、そんなに売れる小説、、、かな???
個人的に非常にシンクロしましたし、どんどん読み進んで行って(次が読みたくて、、、入り難い世界観の時は取っ掛かりを掴むまでに難渋する事も村上文学の場合は御座いますが、、、)、終わり方も悪く無い。
ただ、本当に普通の純文学の部分もあって、、、本来そんなに売れる本とは、、、
凄く楽しめましたが、楽しめる方ばかりとは、、、、
色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 村上春樹
帯から
「良いニュースと悪いニュースがある。
多崎つくるにとって駅をつくることは、心を世界につなぎとめておくための営みだった。あるポイントまでは……。」
主人公である「多崎つくる」の高校時代の友人関係を中心に色々なエピソードが多重構造的に綴られている物語ですが、本当に言葉にし難い感触や、想いを、ここまで言語で伝達出来るんだと、、、
この点に関しては脱帽です。
ストーリーそのものは坦々と進み、捻ったり意外性があったりする訳ではなく、又、そう云ったものを楽しむ小説でもないと思います。
主人公の心の内面の襞を眺めて、それが読み手の心に響けば凄く楽しめる小説だと思います。
個人的には非常に楽しい「村上ワールド」へのトリップでした。
嵌れば麻薬的快楽があるかも知れません、この小説。
前作「1Q84」のレオシュ・ヤナーチェク作曲、シンフォニエッタに引き続き、本作のキー曲はフランツ・リスト作曲、巡礼の年。取り分け第1年 スイスの中の郷愁( Le mal du pays)が今回のテーマ曲。
主人公が過去の自分と向き合う「巡礼の年」とリストの「巡礼の年」、2つの意味を持つ題名なんです。
そして、この曲はラザール・ベルマンの演奏とアルフレート・ブレンデルの演奏(今回は演奏者指名!)で作中に登場していますが、クラヲタなら容易に気が付く様に、この二人の演奏の差、聞き手の受ける印象の差が結構雄弁に物語りの背景を補完して呉れます。
(セロニアス・モンク作曲ラウンド・アバウト・ミッドナイト[作中ではラウンド・ミッドナイト]も重要な記号として登場します)
でも、人の心の内面を綴った私小説的展開の本書がそんなに沢山売れるって、、、???
確かにこの本で初めて村上春樹氏を読んでも全く問題無いと思いますし、比較的普通の話で取っ掛かりは良いと思います。
その分、昔からのファンには中途半端扱いされるかも知れませんが、この小説の自然さって、ここまで心理描写していてそれを保てるのは凄い事ではないかとクマは個人的に思います。
面白そうだなぁと思われたら是非。