謎の猟奇殺人、犯人は?動機は?と最後まで作者に引きずられて読了。
特にラストのどんでん返しは、、、
納得される方も納得されない方もいらっしゃると思いますが、此処まで引っ張れる作者は偉い!
なかなかしてやられた感が漂う一作でした。
切り裂きジャックの告白 中山七里
先ずは帯から
「東京・深川警察署の目の前で、臓器をすべてくり抜かれた若い女性の無残な死体が発見される。戸惑う捜査本部を嘲笑うかのように、「ジャック」と名乗る犯人からテレビ局に声明文が送りつけられた。マスコミが扇情的に報道し世間が動揺するなか、第二、第三の事件が発生。やがて被害者は同じドナーから臓器提供を受けていたという共通点が明らかになる。同時にそのドナーの母親が行方不明になっていた―。警視庁捜査一課の犬養隼人は、自身も臓器移植を控える娘を抱え、刑事と父親の狭間で揺れながら犯人を追い詰めていくが…。果たして「ジャック」は誰なのか?その狙いは何か?憎悪と愛情が交錯するとき、予測不能の結末が明らかになる。」
はい、仰る通り「予想不能の結末」でした。
猟奇殺人事件ですが、
「連続殺人鬼 カエル男」や「魔女は甦る」の様なスプラッタ色の強い作品では御座いません。
それ程えげつ無い描写も出て来ませんので、普通に読めます。
どちらかと言うと、移植医療を中心に据えた社会派ミステリーとして語られるかも知れません。
(個人的には違和感のある部分も御座いましたが、、、)
しかし、本作の本質は、先の見えない、何処に行くのか判らないテンポの良いミステリーであり、純粋に楽しめる推理小説として評価出来ると思います。
但し、読み手が推理しうるだけのデータが作中に提示されていないのですが、、、
まぁ、テーマの一つである臓器移植に関してはここで私見を述べる気も御座いませんし、作中でも推進派、反対派の両意見が書かれているだけで結論じみたものも書かれて御座いません。
(エピローグで作者の想いは何と無く伝わりますが、、、)
それでも、一度この問題を考えてみて欲しいと云う、作者のメッセージは読み手に正確に伝わると思います。
そう言えば、「連続殺人鬼 カエル男」に登場した刑事さんが登場しますが、前作の事件を体験した感覚の記載が上手いです。この辺り、本当にこの作者さんは登場人物の使い方が上手いと思います。
読んだ事のある読み手でも、そうで無くとも楽しめる様に書きつつ、顧客サービスを忘れない。なかなかこのバランスで書くのは難しいかと。
「一気に読ませる」と云う、作者の意図は適えられていると思います。本当に「どうなるの???」と思って最後まで読まざるを得ませんでした。
娯楽小説としてこの点に関しては完全に成功していると思います。
ただ、一つだけ!「ハロタン」と「リドカイン」を間違う事は有り得ません!!!
前者は吸入麻酔薬であり、後者は局所麻酔薬です。全く違う。
(版を重ねた時に訂正すべき部分ですね。間違うなら「ハロタン」と「セボフルラン」)
この事が?の方は読んでみて下さいませ。
結構楽しめる小説ですよ。