殆ど前知識も無く、ヨメが借りたので一緒に観たのですが、、、
う〜ん、こう云うタイプの時代劇の描き方は日本では余りお目に掛からない様な、、、
確かに、歴史的人物の近習目線で描かれた映画は幾つかあったと思うのですが、その描写がたった4日だけって云うズバッとした切り口は、、、凄いなぁ。
でも、結構当時の風俗が丁寧に細かく描かれていたので、十分時代劇として楽しめましたよ。
マリー・アントワネットに別れをつげて 2012年 ブノワ・ジャコ監督作品
前述の様に、火薬庫であったバスティーユ牢獄を巴里市民が襲撃した1789年7月14日から7月17日迄のベルサイユ宮殿の様子を、フランス王妃マリー・アントワネットの朗読係の若い女性の視線で描いた映画です。
比較的淡々とした描写なんですが、女性間の嫉妬や複雑な思いを盛り込みながら、4日の日々を細かく描いています。
歴史的説明も殆ど無く、市民の暴動シーンも無く、バスティーユ牢獄襲撃も情報としてベルサイユ宮殿に伝わった形で描かれています。受け手の想像力に任せる小説的な構成とでも言いましょうか、下手にちゃちなモブシーンをとるより余程良い。それより、宮殿側の人間の動揺、不安を細かに描く事により、見事な効果を上げていると思います。ストーリーの視点がブレ無いので、観客も主人公に寄り添った視線のまま捉える事が出来ますし。
この辺りは本当に仏蘭西映画や伊太利亜映画は昔から上手いですね。
粋です。
主人公が平民ですので、貴族、王族との服装の対比も見事です。
そう云う小物や衣装に語らせる演出は、流れの良い映画の手本の様な演出かと。
目覚まし時計が主人公の部屋にある(当時目覚まし時計なんてどれ程高価だったか、、、)?の冒頭シーンから引っ張り込み方が上手いです。
歴史を知っていても知らなくとも楽しめる作りは本当に見事。
多分仏蘭西国民は自国の歴史ですので、ある程度は市民革命の流れ全体を把握した上で観ているとは思うのですが、他国の人間はそうでも無いでしょうから、、、
最近の日本の時代劇も世界市場を多少は視線に入れてその様な作りに成って来ていると思いますが、此処までは上手く無い。
(却ってそんな事全く意識して作らなかった「七人の侍」の方が、余程世界的に受け入れられてますし、、、)
男性が観ても心理描写が秀逸なので結構楽しめる作品だと思います。
で、ネタバレを若干含むような事を書きますと、、、
先ず、作中、フランス王妃マリー・アントワネットの愛人として描かれるガブリエル事、ポリニャック公爵夫人(正式名称:ポリニャック公爵夫人及びマンチーニ侯爵夫人ヨランド・マルティーヌ・ガブリエル・ド・ポラストロン、、、ああ、ややこしい、、、これだから仏蘭西貴族の名前嫌い、、、)ですが、作中では若い女性の様に描かれていますが、史実ではマリー・アントワネットの6歳年上。スイスに逃げたと云う事に作中では成っていて、そのまま逃げ切れなさそうな演出なんですが、実際はオーストリアへの亡命に成功しています。
ルイ16世が断頭台の露と消えるのも1793年(映画で描かれた4年後)1月21日で、映画の演出の様に巴里に行って帰らぬ人にはならないし(多分、仏蘭西の方は常識として認識してると思いますが、歴史を知らずにこの映画を観ると、、、)因みにマリー・アントワネットが散るのは同年10月16日。
ただ、革命の運命を王として受け入れようとしたルイ16世に対し、マリー・アントワネットが実家に仏蘭西の情報を流して反革命的立場を貫いたのは史実で、その辺りの感覚の描き方はこの映画上手いんですけれどね。
映画を観て、あれ、何か話が、と思い調べ直して、思わぬ仏蘭西革命の勉強に成りました、今更ですが、、、矢張り時代劇はある程度歴史を知った上で観た方が楽しめるのかも知れませんね、、、