この邦題って、、、
「ティファニーで朝食を」のパロディか、、、
原題は「Une Estonienne à Paris」ですから、「パリのエストニア人」でしょうか、此方の方がしっくりするのですが、、、
はんなりとゆっくりと刻の流れる佳作です。
欧州映画の小作の凝集された面白さが楽しめます。
クロワッサンで朝食を 2012年 イルマル・ラーグ監督作品
エストニア人のイルマル・ラーグ監督、これが長編映画監督デビュー作だそうです。
結構老練な監督の作品かと思ったのですが、意外でした。
映画全体に流れる空気は、エストニアとフランスの文化、感覚、価値観の見事な対比でしょうか。
日常を普通に描く事によって、見事にそれが浮かび上がってきます。
そして、大人の恋愛映画としての側面も。
幾つに成っても恋愛感情は人生の彩りと云うフランス人の人生観が滲んでいます。
さっくりと描かれているだけに感じられるものが在ります。
しかし、主演のジャンヌ・モローさん、巴里のアパルトメントに一人住むエストニア人の老婦人を演じているのですが、この映画出演時85歳!
フランスを代表する大女優の演技を超えた実存感が凄いです。
そこに居るだけで空気を作れる女優だけが持つ支配力、つくづくそれを感じました。
本作品での彼女の衣装はほぼ全てシャネル、それも彼女の私物だそうです。
個人的に交友が会った為、当然市販品レベルの物では御座いません。
それが、全く違和感無く似合う。
それを観るだけでもこの映画を観る意味があるかも知れません。
そして、もう一人の主演であるライネ・マギさん、エストニアからフランスに家政婦として雇用され出て来た夫人を演じています。
エストニア出身の女優さんで、出演時54歳。
母の介護に疲れ、死を看取って巴里に出て来て、少しずつ巴里の風に現れて変わっていく女性を見事に押さえた演技で表現しています。
この方の空気感も素晴らしい。
ジャンヌ・モローさんに潰されてません。場面によっては互角の存在感を放っています。
全体に押さえた演出と、比較的淡々とした時の流れで、一歩間違えるとドロドロした話に流れてしまう所を、上手く纏めていると思います。
その上で御伽噺には成らない様に。
この辺り、とても長編映画監督デビュー作とは思えません。
実はこのストーリー、監督さんの母親の実話を基にしたものとか。
それにしても見事な演出です。
楽しめた映画でした。