題名から御気付きの方は御気付きでしょうが、中島みゆきさんの「ファイト!」と云う曲から構想を得て書かれた作品だそうで、章毎のタイトルも歌詞から引用されています。
頑張る若い女性が主人公のこの作品、主人公のキャラクターは非常に魅力的ですが、作品としては少々盛り沢山に成り過ぎてテーマがぼやけている様な、、、
楽しめましたけれどね。
闘う君の唄を 中山七里
帯より
「どんでん返しの帝王は物語を一体どこへ、連れて行くのか!?」
「健気なニューヒロイン、誕生!」
「黒中山ファンも、白中山ファンも、裏切りません!」
「あの渡瀬警部も登場!」
「新任幼稚園教諭として埼玉県秩父郡神室町の「神室幼稚園」に赴任した喜多嶋凛は、モンスターペアレントたちの要求を果敢に退け、自らの理想とする教育のあり方の実践に務める。当初は、抵抗されるも、徐々にその熱意が伝わり、周囲の信頼も得られていくのだが…。」
まぁ、上記の帯の記載通りの話で、新任幼稚園教諭がモンスターペアレント相手に真面目に情熱で信頼を勝ち得て、、、と、テレビドラマの如く上手く行く話で、途中まで読みながら、「あれ、最近この方作風を変えて来たのかな?」と思ったのですが、、、
前作の「
総理にされた男」も結構ストレートな熱い話でしたし。
これはこれで読み易い筆の作者に乗せられるのも悪く無い気だったのですが、あれ、、、
善意の第三者の悪意、それも匿名に近い、それに責められ追い詰められる空気の描写が素晴らしいです。
現代の日本では誰にでも降りかかる恐怖ですから。
全く罪科も無いのに責められる、そんな理不尽さが、主人公の無念が伝わって来ます。
そして、どんでん返しのラストなんですが、、、
個人的にはこの構成にしなくても、単純に前向きな新任幼稚園教諭の熱血物語でも良かった様な気も、、、
まぁ、中山さんのファンからすれば、渡瀬警部が現れた時点で焦臭い話に成るんだろうなと、思いましたが。
先の「総理にされた男」がシンプルに楽しめる娯楽政治小説でしたので、その様な作風もアリだよねと思いましたし、本作もそうかなと思い読み進めましたから、無理にこの構成にしてどんでん返ししなくともと云う思いの方が強いです。
それに、単純な話だった方がこの魅力的なキャラクターの主人公の続編が読めそうでしたし。
(探偵か刑事でも無い限りそうそう一般人が事件に巻き込まれるというのも、、、無いですよね)
サブキャラクターのとても論理的でそつの無い同僚との掛け合いも楽しかったので、彼女たちの他作品への顔出しを楽しみにしておきましょう。