雪山シリーズ、第3作目。
前作の「
疾風ロンド」も軽いタッチの作品でしたが、更に輪を掛けて軽いです。
完全に東野さん、雪山を滑る楽しさを筆に任せて作品に仕上げたって感じ。
ミステリーとしては浅めですし、骨太の東野さんの著書に見られる人間関係の深さ、悩み、それらの心理描写は、、、無いです。
雪山を滑る時に何も考えずに、その瞬間を楽しむ、そんな感覚の小説です。
でも、雪山好きにはとっても楽しめる作品かと。
サクサク読めますし(^o^)
文庫書き下ろしですので、文庫本帯より
「逃げろ!!そして謎の”女神”を捜せ!」
「無実の証人を捜せ!追跡者が来る前に」
「殺人の容疑をかけられた大学生の脇坂竜実。彼のアリバイを証明できる唯一の人物―正体不明の美人スノーボーダーを捜しに、竜実は日本屈指のスキー場に向かった。それを追うのは「本庁より先に捕らえろ」と命じられた所轄の刑事・小杉。村の人々も巻き込み、広大なゲレンデを舞台に予測不能のチェイスが始まる!どんでん返し連続の痛快ノンストップ・サスペンス。」
舞台は作品中では「里沢温泉スキー場」と成ってますが、野沢温泉スキー場です。
東野さん、此処がホームゲレンデなのかとても詳しいです。
と、言ってもクマ自身も学生時代此処をホームゲレンデにして、その後も何回行った事があるか判らないスキー場ですので(少なくとも延べ200〜300日は滑ってます)、作中の描写、特にどのリフトに乗ってどのゲレンデで会って、や、架空のゲレ食等の描写を完全に実名に変換して所要移動時間まで判りますので、正確に作中の動きをイメージして楽しめましたが、そうで無い読み手だと、、、
多分、全くイメージ出来ない様な、、、
少なくともスノーボードやスキーをした事が無いと、描写の感覚がイメージ出来ないかと。
なので、雪山遊びをした事の無い方は、楽しめない作品なのかも知れません。
ストーリーそのものはシンプルで、謎解きも無く、真犯人も唐突に判明し、そう云う意味では東野圭吾さんらしくない作品なんですが、雪山に対する愛情、滑る事の楽しさが非常に良く伝わって来て、ああ、この方、本当に滑るのが好きなんだなぁと。
そこが本作の書きたかった本質ではないかとも思います。
そこで共感出来ないと、、、
「疾風ロンド」の時にも書きましたが、「もし、東野圭吾さんの加賀恭一郎シリーズやガリレオシリーズがお好きで、あの読み応えをお望みでしたら、、、取り敢えず、本書と「白銀ジャック」はパスして頂いても、、、」、本作もこれに相当します。
では、最後に、本作に出て来る固有名詞を実存の呼称に変換しておきましょうか。
「里沢温泉スキー場」→「野沢温泉スキー場」
「スカイハイウエイ」→「スカイライン」
「山頂近くまで行く方のゴンドラ、長峰ゴンドラ」→「長坂ゴンドラ」
「カッコウというレストラン」→たぶんパラダイスゲレンデ上部の「パノラマハウス ぶな」
「短い方のゴンドラ、日向ゴンドラ」→「日影ゴンドラ」
「こだまリフトA」→「やまびこフォーリフト」
固有の名前が付いてないところも殆ど現実の場所に変換可能です、野沢温泉スキー場に詳しければ。
雪山好きの方は是非!!!
滑っている様に楽しく読める1冊です。