帯にも何処にも謳われていませんが、「
魔女は甦る」の続編です。
一部登場人物もキーと成る物質も被ります。
ですから、これを御読みに成るのであれば、「魔女は甦る」を先に御読み下さいませ。
但し、続編で在りながら受ける印象が大分と違う様な、、、
トーンが違うと云うか、明度が違うと云うか、、、
ヒートアップ 中山七里
先ずは例によって帯から
「七尾究一郎は、厚生労働省医薬食品局の麻薬対策課に所属する麻薬取締官。警察とは違いおとり捜査を許された存在で、さらに“特異体質”のおかげもあり検挙率はナンバーワン。都内繁華街で人気の非合法ドラッグ“ヒート”―破壊衝動と攻撃本能を呼び起こし、人間兵器を作り出す悪魔のクスリ―の捜査をしている。 暴力団組員の山崎からヒートの売人・仙道を確保するため手を組まないかと持ちかけられ、行動を共にして一週間。その仙道が殺される。死体の傍に転がっていた鉄パイプからは、七尾の指紋が検出された…。殺人容疑をかけられた麻取のエース・七尾。誰が、なぜ嵌めたのか!?冤罪は晴らせるか!?―。」
「ヒート」は「魔女は甦る」でも作品のコアと成る薬剤です。
違う方向からそれを追う者を書いた話なのですが、登場人物のキャラと描き方が違うので、前作と印象が随分異なります。
で、作品のテンポそのものが前作と異なり、アクション寄りに成っていますので、前作を読んでいないと細かな背景が判らず、それはそれで読み飛ばせるだけの筆力は作者にあるので問題は無いのですが、読み手としては、、、
本作は主人公である七尾と名脇役足る山崎のコンビが織りなす物語のテンポがアップビートで暗く無く、余りスプラッタな描写も無いので(そこに力が入って居無いので、サラッとしてます)、前作よりも一般的に読み易い作品に成っています。
特に途中、主人公に殺人容疑が掛けられる辺りから巻末までは一気呵成の流れですので、アクション好きにも楽しめる構成です。
ただ、この辺りが前作のファンから見ると、好みの分かれる所かも知れません。
クマは個人的にどちらもありなタイプですので、前作の内向的な澱んだ流れも、本作の攻めの流れも楽しめました。
音楽絡みのミステリー(「さよならドビュッシー」「おやすみラフマニノフ」)の作者として世に出た作者ですが、ほぼ同時に「黒中山」と称される、スプラッタ・ダーク小説も書かれていますので、筆の幅は広い方の様で、今後が楽しみです。
(音楽シリーズの続編「いつまでもショパン」は来月刊行予定です)
最後に、書評等で「浅い!」「捻れ!」と言われているオチなんですが、、、クマは、今回全く読めませんでした、、、ああ、情けない、、、