判り易い事が判り難い映画と言うか、賛否両論あるのが北野武氏の映画の常。
極個人的に「あの夏、いちばん静かな海。」と同じ様に好きな北野武氏の映画です。
残酷な暴力シーンは全く出て来ないのに、とことん残酷、、、
Dolls 2002年 北野武監督作品
「これはすごく個人的な映画だから。当たるとかいう問題じゃなかったね。喜んで絵描いてるみたいなもんだよ。そういうときべつに評価とか一切関係ないから、下手すりゃ人が見なくたっていいわけで。自分で撮って、しまっちゃうような映画でもあんのよ、ほんとは」「引っかかってたから、こういう映画ね。一回はやりたいって」
と、監督本人が語っている様に、作り手の心内風景を投影したような画像が鏤められています。
環境ビデオ的鑑賞すら可能ではないかと思う程に。
ただ、そうでは無く、しっかりと強いメッセージが込められています。
「愛」に関して。
3つの恋愛に関するエピソードが絡みつつ話は進みます。
淡々と、しかし間延びせず。
その語られ様は現実的では無く象徴的、それがこの映画の評価を二分するものと成っているかと、、、
つまり、個々のシーンやエピソードに関して「現実では有り得ない」とか「臭すぎる」と云う声もある訳ですが、具象では無く、抽出した抽象で方程式を展開したらこう成った!と、云うような印象すら受ける映画ですので、その様な指摘は、、、
敢えて暴言を吐くと「どうぞ、もっと具象のみで描かれている小学生でも判る映画をどうぞ!」です。
カメラワークも作品内容を指示するように非常に美しい。
更に北野作品には珍しく俯瞰が多用されています。これが誠に効果的です。
俳優さんの演技も素晴らしいです。
見事に作品を支えている。
取り分け、菅野美穂さんは、、、天才ですね。この方。
西島秀俊さんも今とは違う側面が見られます。
合う、合わないがこれ程二分する作品も珍しいかも知れません。
退屈な方には途轍もなく退屈、面白い方には凄く面白い。
そう云う映画って、ある意味、良い映画だと思います。
「数学というものは哲学であって、全ての事象は数学に支配されており数学で説明できる」と言い切る監督が恋愛映画を撮ると、、、
これが解答かも知れません。