著者得意の銀行を舞台にした短編集ですが、読み続けると相互の短編がリンクし、登場人物が絡み合い、、、実は上手く出来た長編、、、
シャイロックの子供たち 池井戸潤
文庫、裏表紙より
「ある町の銀行の支店で起こった、現金紛失事件。女子行員に疑いがかかるが、別の男が失踪…!?“たたき上げ”の誇り、格差のある社内恋愛、家族への思い、上らない成績…事件の裏に透ける行員たちの人間的葛藤。銀行という組織を通して、普通に働き、普通に暮すことの幸福と困難さに迫った傑作群像劇。」
細かな心理描写と内面に迫る意味では「半沢直樹」シリーズより出来の良い一冊かも知れません。
その分、エンターテーメント性は後退しています。
でも、面白くって一気読みに成る事は必定かと。
舞台は何時もの「東京第一銀行」の長原支店。
平凡な日常の中での人々の葛藤、苦悩を赤裸々に描いています。
一つずつの短編は各々で楽しめる面白さとコンパクトさを持っています。
しかし、各々の話は互いにリンクし、埋められた伏線となり、納得出来るラストへと続いていきます。
いや、構成が良いですね。上手い!!!
本作は半沢直樹シリーズ1作目の「オレたちバブル入行組」の後、「オレたち花のバブル組」の前に書かれています。
丁度筆者の筆が上手く熟れて来た頃。
だから、文章も読みやすいですし、時間があったのか構成も相当練られてます。
色々な人間が主人公の短編、各々のキャラが生きています。善人もいれば悪人も。
世の中そのものの様な構成です。
短編としてきっちり話は終わっています。どれ一つ取りだしても楽しめます。
そして、大きな流れが短編集を纏め、終焉へと導いてくれます。
この作者さんの作品を初めて手に取るのであれば結構御勧めだと思います。
面白いですよ。