「誰か」「名もなき毒」に続く、杉村三郎シリーズ第3弾。
冷静にして善人、バランス感覚が強く感情制御能力も高い、大財閥の婿養子の主人公が、なぜか事件に巻き込まれるこのシリーズ。
今回も同じ様なパターンで巻き込まれるのですが、、、
ペテロの葬列 宮部みゆき
帯より
「『誰か』『名もなき毒』に続く杉村三郎シリーズ、待望の第3弾。
宮部みゆきの新たな代表作、誕生!
「悪」は伝染する。
今多コンツェルン会長室直属・グループ広報室に勤める杉村三郎はある日、拳銃を持った老人によるバスジャックに遭遇。事件は3時間ほどであっけなく解決したかに見えたのだが―。しかし、そこからが本当の謎の始まりだった!事件の真の動機の裏側には、日本という国、そして人間の本質に潜む闇が隠されていた!あの杉村三郎が巻き込まれる最凶最悪の事件!?息もつけない緊迫感の中、物語は二転三転、そして驚愕のラストへ!」
勿論単独で読む事は十分可能な様に構成されていますが、出来ましたら「誰か」「名もなき毒」と順に読んで頂いた方が、人間関係、想いや柵が感覚的に理解出来て、読み易いと思います。
まぁ、シリーズものは一般的にその様なものですが、、、
誰もが持ち得る欲、金銭欲と言う程強いものでは無く、「少し増えないかなぁ、、、」「もう少し健康に、、、」と云う想いにつけ込んだ商法に関わった人間、そんな人々が加害者が被害者に、被害者が加害者に立場が入れ替わりつつ負の連鎖を紡いでいく、それが基本骨格でしょうか。
そして、インターネットという名も無き大衆の圧力。
それらが1つの事件を通して、動機や人間関係が徐々に明らかになっていく過程で露わになってきます。
基本、主人公が比較的草食系の淡々とした、でも粘り強い性格ですので物語も淡々と進みます。
それぞれの登場人物の、様々にベクトルや強さの違う想いが交錯しながら。
この辺りの描写の細かさは宮部みゆきさんならでは。
細やかなんですがのめり込むこと無く、若干客観的に書き込まれています。
と、何時もの宮部節を楽しんで読み進めていくと、、、
なんじゃ、この、エンディング!!!
本年最高の「なんじゃこれ、エンディング」年末にして降臨!!!
読み終えて暫く「なんじゃこれ!」「なんじゃこれ!」と云う思いがクマの頭の中でぐるぐると、、、
基本ネタバレを出来る限りしない様に記載しているのですが、本作では、、、これ以上無理、、、で、以下ネタバレ記事です。
(以下、白文字で記載致しますので、御読みになりたい方はドラッグして下さいませ)
いやいや、ラストでヨメが浮気していて、別れたいって、、、なんじゃ、この、超我が儘お嬢さんヨメは、、、その言い訳もファンタジー、、、確かに作為的に悪意を持ってばらまかれた噂に対して主人公の脇の閉め方も甘いんですが、、、
このラストを読んで、これを主題として読み直すと、見事にその伏線が敷かれてるんですよね。
間違い無く、このラストを想定して書かれた小説なんですね。
浮気に行くのにおしゃれしている状況が凄くさりげなく、書かれています。
まぁ、でもこのラスト、男の作家さんでは中々こうはいかないでしょうね。
淡々と進めてきた物語のラストで突発的感情噴出ですから。
実際、一般的に男って女の人から「何時何時こんな事を言った」「あの時はこんな事をした」とか忘れた昔の事を今更の様に騒ぎ立てられると、「ああ、面倒臭い!」しか思いません。
その様な想いも余り持たない善人の主人公なんですが、、、普通の男なら、まぁ、こんな女と結婚せんか、、、
何となく、そんな生理的不快感を感じさせるラストです。
女の人は感覚的に共感出来るんかなぁ、、、???
これまでのシリーズでもこのヨメには苛ついてましたので(読みながら)、「遂にやりよったか」と云う思いの方が強いですが、、、
この辺りの捉え方でこの作品の読後感は変わると思います。
二分化されると思いますが、それも作者の意図かと、、、
これで、大金持ちの婿さんキャラから独立した探偵キャラで物語は進んでいく様な気がします。
それはそれで、この主人公の善良な沈着冷静さは好きですので、続けて頂きたいと思います。
コンツェルンの会長は兎も角、あのヨメには御退場頂いて!
追加加筆
読み終わった我がヨメ曰く「全然意外ちゃうやん!奥さん、ずっと私を観て!ってメッセージ出し続けてるやん!」
へぇ???
「483ページの下りで夫婦関係破綻してるの判るやん!」
そう言われれば、、、
「428ページの学芸会の場面で橋本さんが出て来るの変やし!」
成る程、、、
「あんた、女心全く判らんわ www このストーリーは予定調和!」
そないですか、、、