中山七里さんのデビュー作、第8回『このミステリーがすごい!』大賞大賞受賞作である「さよならドビュッシー」の映画化作品です。
それなりに上手く纏まっていて、本作品だけを観ると楽しめる構成に成って居ます。
本作品を観て、原作を読んで頂くのが一番良い様な気が、、、個人的感想ですが、、、
さよならドビュッシー 2013年 利重剛監督作品
ほぼ原作通りのストーリーで舞台は名古屋。
結構ローカルに馴染んだ映像が散見されて何と無く嬉しい様な、、、
まぁ、それは兎も角、映画の主題は火事で大怪我を負い、歩く事すらままならなくなった少女のピアニストとしての再生物語。
確かにこの描き方は映画として纏まりますし、悪く無いと思います。
主演の橋本愛さんの演技もとても将来性を感じさせるものですし、ピアノ教師にしてキーパーソンである岬洋介を演じた清塚信也さんも本職だけあって、素晴らしい演奏に加え、結構雰囲気のある役に馴染む演技で楽しませて呉れます。
まぁ、一部、どう云う意図であの演技なのか判らない役の方もいらっしゃって、何と無く落ち着きの悪い部分もあるのですが、、、
ただ、原作の持つ(と、言うかこの作者さんが本質に持つ)人間のえげつ無い側面をあからさまにする部分は、、、殆どサラッとカットですが、、、
確かにこの部分を描くと映画の雰囲気も重たくなるだろうし、娯楽映画で無くなるかも知れませんので、致し方ないかと思います。
それと、文学が文字で音楽を書くしか無い部分を映画は実際の音楽を流す事で描写出来るので、明らかなアドバンテージを持つかも知れません。
しかし、この小説の様に非常に細かく分析的に描写した場合、読み手がその音楽をよく知っているならば、全く実際に音楽が流れている必要は無いのですよね。
逆に、映画の方が表層的描写に成ってしまっている様にさえ思える部分も御座いました。
とは、言うものの、一般映画をクラヲタ対象映画として作る訳にも行かず、、、
(その点、アニメって作品によってはアニヲタ対象映画として作っても世界市場を視野に入れると、十二分にペイする上に、その後のDVDや関連商品の売り上げを考えると、、、)
原作を読まずに映画だけ観るとそれなりに纏まっていて楽しめる音楽映画だと思います。
ただ、クラヲタの方は是非原作を読んでみて下さい、とても楽しめる作品だと思います。