以前から、この方の自動車評論は非常に面白く読んできました。
まぁ、メインストリームを走る方では無いのですが、自らが経験し、考え学んできた自動車の構造、力学を基礎に、柵みに囚われないストレートな評論は、頷ける物が多いです。
伝聞の様な文献的知識では無く、生の知識によって語られる言葉には力が在ります。
(取り分け、過去のスーパーカーに関する著述は、山程あるその手の本と一線を画するものだと思います)
そんな福野さんの2006年以降の記載をCG社が纏めたのが本書であり、全集の1冊目です。
福野礼一郎あれ以後全集(1) 福野礼一郎
本来雑誌に掲載された文章ですので、掲載当時の写真等が掲載されていません。
そこは画竜点睛を欠いています。
それでも、様々な雑誌に書かれた様々な記事は福野さんらしい切り口で、楽しめます。
捻子の話なんて数式が当然の様に出て来ますし。
フェラーリの試乗記事なんて完全に貶してますし、、、ええんかなぁ、、、
フォルクスワーゲン ゴルフプラスがゴルフで、ゴルフがゴルフ マイナスって書いてるし、、、
いや、確かにその通りだとは思いますが、、、
取り分け、「伝説の検証:メカに関する疑問1〜3」は、クルマ好きに常識とされる様々な事を都市伝説として一刀両断、飽く迄科学的根拠に基づいて明快な回答を読み手に投げつけてきて、非常に楽しめます。
(一部、目から鱗も御座いましたが、、、)
読者に媚びた様な新車紹介や試乗記事、メーカーの技術解説を書き直した様な技術記事が多い自動車雑誌ですが(書きながらオーディオ雑誌も、、、と、思ってしまいましたが、、、)、自分の中に確たる評価軸を持ってメーカーにも読者にも媚びない文章は、本当に参考に成ります。
感性で文学的表現をされても、全くどう云う機械か判りませんものね、そのクルマが。
(此処もオーディオと同じ)
そう云う雑誌なら読みたくも無いし、、、
ただ、初出の時から多分在った、誤字、脱字、間違いが推敲、校正されていない様な気が、、、
全集として出すのであれば、この辺りはきっちりして頂けた方が良かったかと。
折角、とても面白く読む事が出来る著述集なのですから。