前作「愛娘にさよならを」から4年振りの新作です。
TVシリーズ、映画シリーズと異なり、前々作「殺してもいい命」で3発の銃弾を受けた事から左腕神経麻痺で左腕が動かない状況に成り、警視庁捜査一課を離れ、検挙率No. 1でも無くなり、40半ばに成った主人公が、新宿署組対課勤務として現場復帰し、変わらない姿勢で犯罪を追う、ファンとしては待望の1冊でした。
アンフェアな国 (刑事 雪平夏見) :秦建日子
帯より
「シリーズ最新作! 轢き逃げ事件の目撃者 彼女の証言は嘘か真実か? 真相を追い、海を渡った雪平は・・・」
「私、運転していた人の顔、見たんです。警察が逮捕した人は、全然違う人なんです」「え?」
「不可解な異動で、新宿署組対課勤務となった雪平にかかってきた一本の電話。危険ドラッグ常習者によって外務省職員が轢き逃げされたその事件には、あまりにも多くの謎が残されていた。新宿署の杜撰な捜査。杳として行方が知れないもうひとりの被害者。奇妙な行動をとる新任署長。韓国から来た男。やがて、真相に迫る雪平とかけがえのない仲間に悲劇が襲いかかる―仲間への思いを胸に海を渡った雪平を待つ哀切な真相とは?歳を重ね、左腕が麻痺し、もはや「捜査一課検挙率No.1」ではなくなった一人の刑事・雪平夏見が、シリーズ最大の闇に挑む!」
主人公の雪平夏見警部補、相も変わらず生き方が全くぶれません。
ただ、齢を重ね身体的問題もあり、昔程は無茶な事は致しませんが、本質には変わりが無いです。
そして、その姿勢を認めた仲間は、本作でも変わらず登場します。
この辺りがテレビシリーズと随分異なり、人間模様の面白さが楽しめます。
推理を楽しむよりはキャラクターを楽しむ小説なのかも知れません。
物語そのものは全体像が明らかに成り、細かな解決を見ないまま終焉を迎えますが、この終わり方、個人的に悪く無いと思います。
ラストの方で、雪平が真相を知る流れが、若干御都合主義的な部分もあると言えばあるのですが、関係した人間のキャラクターを上手く使って違和感の無い仕上がりに成っていると思います。
(この辺りは読み手によって感じ方が異なるとは思いますが、、、)
作者の秦建日子(はた たけひこ、御本名で男性です)さんは脚本家でもあり、そちらの御仕事もあるためか、本作は4年振りの新作です。
それでも本シリーズは続けるとの事ですので、本作で登場した新しいキャラクターがどう絡むのか、これまでのキャラクー達がどう成るのか、ファンとしては目が離せない所です。
TVシリーズ「アンフェア」のイメージが強く引っ張られますが、全く別の物語として続いていますので、もし本作を読まれるのでしたら、是非1作目の「推理小説」から御読み下さい。
(主人公のキャラクターイメージはTVシリーズそのままで問題無いと、個人的には思うのですが、、、)
とても楽しめる物語です。